ちゃららのごくどう日記

土佐弁で、なまけ者とか、ぐうたらな人のことを「ごくどうもん」と言います。自由な土佐の山間から、田舎のおばちゃんが、あれこれ書いてみます。

主人はご機嫌ななめ

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先日、買い物から帰って来た時のことである。

リビングのパソコンでYouTubeを見ていた主人が、私のほうを振り返りもせず、背中越しに

「お前に、ちっと、金をもらわんといかん」

と、とても不満げに呟いた。

えっ?なんのこと?ネットで、また、何か買いたいものでも見つけたがぁ?

一瞬、そう思ったのだが、それにしては、どうも態度がおかしい。主人の横顔を盗み見ても、いつもと様子がなんとなく違うし、私に背中を向けたまま、わざとむすっとしている……ように思える。

『まるで、怒っちゅうみたいな態度やん。私、なんか怒らせるようなことしたかな?』

訳が分からず、黙って様子をうかがっていると、やがて、主人が口を尖らせて

「出演料や! ったく、俺の知らんところで、俺のことを勝手にブログに書きやがって!」

と、不満を口にした。

あらら、読んじゃったのね(笑)。なーんだ。そんなことか。

 

誤解のないよう断っておくが、私は、ブログを書いていることを、主人に秘密にしていたわけではない。読まれて困るようなことも書いていないし、むしろ、主人にも読ませたいと密かに思っていたくらいだ。なので、主人がブログを読んだのなら、好都合。「上手に書けちゅうろ?」と笑って答えて、丸く収まると思っていた。

が……。

なぜか主人は、私の意に反して「嘘を書いたらいかんろが!」と、文句を言うではないか。

はぁ?

「えーっ、嘘なんて書いてないやん!」

思わず、そう反論すると、主人は、

「誰が人相悪いな!俺は人相悪うない!失礼な!」

と、少々ご機嫌ななめな様子。いやいや、アナタね、誰がどう見ても、人相悪いです。そろそろ、自覚しましょうね。

「でも、読んだ人から、素敵なご主人さんですねとか、コメントも貰ったで」

主人の怒りなんぞどこ吹く風とばかりに笑って受け流すと、

「どこが上手に書けちゅうな、いかん、いかん!こんなん、書き直せ!」

と、声を荒げて答える主人。

「なんで?怒ちゅうが?」

そう訊くと、間髪入れず、

「ふんっ!この程度のことで怒りよったら、お前の旦那はつとまらん!」

と、主人がしれっと答えた。

口では怒っているが、顔が笑っているようなので、どうやら、問題はないだろう(笑)。まったく、面倒くさいヤツである。

 

さて。

そんな主人から、ブログの内容について、二か所ほど「ダメだし」が入った。ブログを書くのはいいが、どうしても補足説明して欲しいと言ってきかないのだ。

一つ目は、おんちゃん達の鰻バーベキューについて。

そもそも、鰻バーベキューは、おんちゃん達が、自分達だけの楽しみでやっているわけではない、と主人は言うのである。

地域のお年寄りや、日ごろお世話になっている人達にも鰻を食べてもらおうという趣旨のもと始めたことで、そこをちゃんと書いてもらわないと誤解を招くのだ、と

主人曰く、田舎に溢れる豊かな自然は、そこに住む地域の人々、みんなのものだ。山も、川も、地域の人みんなで守っているし、みんなの支えがあるからこそ自然の恵みを得ることができる。しかし、独り暮らしの高齢者や、川漁が苦手な人は、どうだろう?同じ地域の仲間であるにもかかわらず、鰻や鮎を捕まえに行くことはできない。ならば、おんちゃん達が鰻や鮎を捕まえて、みんなに食べさせてやろうじゃないか。みんなと自然の恵みを分け合うことが、そこに住む者としての務めというものだ。と、文章にすると少々大げさな感じもするが、だいたいそんなことらしい。

確かに、先の鰻バーベキューには、地域のお年寄りや、新規就農したご夫婦に、日ごろお世話になっている役場や土木関係者などなど、多数招待されていて、大宴会だった。

それに、おんちゃん達はたまに「猟游会」という名前でボランティア活動などもしている。地域のイベントで、猪汁を作ってふるまったり、夏祭りで鹿肉を焼いて販売し、売り上げを社会福祉協議会に寄付したりもしている。しかし、そんな社会貢献活動でさえワイワイ言いながら楽しそうにやっているから、はた目には、遊んでいるみたいに見えるのだな。

「お前のブログやと、俺らが自分らの楽しみのためだけに、山や川で、放蕩の限りを尽くしゆうみたいに思えるやろ。けんど、俺らは、そうじゃない」

と、主人は言った。おんちゃん達は、自然の恵みを独り占めするような無粋なことはしない。恩恵は、みんなで分けあってこそ、初めてありがたいと言えるのだ。

さすがは、土佐のいごっそう!信念を貫く、高知のおんちゃん達なのであった。

 

 で、もう一か所のダメ出しである。

「あと一つは、何?」

私が訊くと、主人はニヤリと笑って、

「捕まえた鰻が、全部で百匹やったことを、ちゃんと書いちょけ」

と、言った。

「えーっ、ほんまに百匹もおったがぁ?」

「おったよ!ほんまやき」

「なんか、あやしい。ていうか、その情報いる?」

「何を言うか!そこが一番大事なところやないか!ちゃんと書けェよ!」

そうなのだ。うちの主人は、言い出したらきかない。

「あー、はいはい、わかりました」

「はいは一回でえい!」

あー、はいはい。

面倒くさいヤツである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆのすを使って、田舎のちらし寿司を作ってみよう!

皆さん、こんにちは! 自称、土佐の田舎料理研究家のちゃららでーす。

そして、私の拙いブログをいつも読んでいただきまして、本当にありがとうございます。皆さん、夏バテとかしてませんか?

 

それにしても、毎日、本当に暑いですねぇ。今日も朝からいい天気で、外に出ただけで汗だくになるような気温です。お日様が、もうちっと遠慮してくれたらいいがですけど、うまいこといきません。

ところで。

最近、「朝から顔色が悪いで!」と主人から言われるくらいの白塗りで仕事に出掛けゆうがですが、昼前には、日焼け止めも毛穴の汚れもお肌の潤いも何もかも、全てが汗で流されて、どこに何を塗ったのかすら、思い出せない毎日です。この調子やと、夏が終わるころには、ガングロギャルとしてデビューできるかもしれません。今のうちに、厚底サンダルとミニスカートも買うちょこうかなぁ。あっ、でも、パラパラの振り付けをよう覚えんき、やっぱ、無理かなぁと、ちょっと心配しています。

 

そもそも、高知は暑いところながですよ。なので高知県民は、他県の皆さんに比べたら、暑さに対する耐性はできちゅうほうやと思います。けんどね、こんな暑い日が毎日続いたら、さすがの高知県民でも身体はだるくなるし、食欲やって減退します……。もう、泡の出る流動食以外は食べたくない!って、つい言い出しそうになるがですね。

あっ、もちろん、私の場合、ですけども(笑)。

でもねぇ、夏場を乗り切る定番スタミナ料理の鰻もお肉も、この前バーベキューで食べたがですよ。もうなんか、こってりしたものより、もっと、あっさりしたものが食べたいっ!

たとえば、「ゆのす」が効いたさっぱりしたものとか……。

 

と、いうわけで、今回は「ゆのす」が効いた田舎のちらし寿司を皆さんに紹介したいと思います。

なんたって「ゆのす」には、美肌効果やリラックス効果、コレステロール値を下げる効果の他に、疲労回復効果もあるらしいし、他にも殺菌作用、食中毒予防効果もあるがですよ。夏場にはぴったりですよね。おほほほほ。

 

 さて。

私が住みゆう高知県東部でお寿司と言うたら、いわゆるお酢(穀物酢)はあんまり使いません。皿鉢料理に乗っちゅうサバの姿寿司のサバも「ゆのす」でシメてお寿司にします。

私の得意料理、鮎の姿寿司の鮎も、当然ですが「ゆのす」でシメて、酢飯にも「ゆのす」を効かせて作ります。

ちなみに、鮎の姿寿司は、こんな感じです!皆さん、よだれ、出ましたか?

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(すみません。わたくし、しれっと自慢しております)

この、鮎の姿寿司も、合わせ酢の配合は「ゆのす」を効かせた他のお寿司と同じ、基本の配合で作るがです。そして、基本の配合で混ぜ合わせた酢飯に、砂糖と醤油で煮た具を混ぜこんだのが、田舎のちらし寿司になるがですね。

それでは、作り方を説明していきます。

 

ーー材料ーー

 米3合

(合わせ酢)

 ゆのす(塩入り) 大さじ5

 砂糖     大さじ4

 塩      小さじ1弱

 うま味調味料 小さじ2分の1

 (具)

 サバの切り身 半身の半分

 油揚げ    小一枚

 人参     50グラムくらい

 椎茸     4、5枚

 こんにゃく  40グラムくらい

 生姜     ひとかけ(30~40グラム)

  いりごま   大さじ2

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 (仕上げ)

 錦糸卵    適当に

 すまき    一本

 さやいんげん なかったき、キュウリで代用

 紅ショウガ  ピッピ

 

① まず、お米を洗って炊飯器にセットしたら、いつものご飯を炊くのと同じ要領で炊きます。寿司飯は、水分量を少なめに炊く人もいますが、私は普通に炊いたほうが好きなので、いつもと同じ水加減で炊きます。まぁ、これは好みの問題ですね。

② お米が炊き上がるまでの間に、具材を煮ます。

油揚げ、人参、椎茸、こんにゃくをf:id:kitagawayuzu:20180716223926j:plain

こんな感じで大きさをそろえて刻んだら、砂糖とうす口しょう油と出汁で、10~15分程、弱火で煮ます。今回は、出汁100CCに、砂糖大さじ1、うす口しょうゆ大さじ2弱くらいで味付けしましたが、こんなんは、皆さんのお好みで適当に味付けしてください(笑)。具も、春ならタケノコやエンドウ豆、他にもヒジキやゴボウやレンコンなどなど、ちらし寿司に合いそうな具材なら何でもオッケーです。

③ サバを焼きます。焼きあがったら、骨と皮を取り除いて、身をフレーク状にほぐします。

④ 生姜をみじん切りにします。そして、合わせ酢の材料(ゆのす、砂糖、塩、うま味調味料)をボールに入れ、③でほぐしたサバとみじん切りにした生姜を入れてよく混ぜます。

⑤ ②の具材をざるにあげ、煮汁を切ります。

 

さあ、このあたりで、ご飯が炊き上がって、いい感じに蒸らし終わっちゅうがです。いよいよ仕上げでーす。

 

⑥ 炊き上がったご飯を、寿司桶や大き目のボールなどに移し、④を回しかけ、いりごまを加えたら、しゃもじで素早く、切るように混ぜます。そして、合わせ酢がだいたい馴染んだところで⑤の具を入れ、 今度はさっくりと混ぜ合わせます。

⑦ ⑥を器に盛りつけたら、仕上げ用の錦糸卵やすまき(ナルトの親戚みたいなやつ)なんかを飾り付けて完成!

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ヤッター!美味しそ―♡

 

高知ではそうめんも、このちらし寿司のように、錦糸卵や煮つけた油揚げ、椎茸でデコレーションするがです。

大皿に盛りつけて、みんなでシェアして食べるのが一般的です。そして、そうめんの上に、青い柚子の皮と、生姜をすりおろして食べたら、もう、めっちゃ美味しい!

あっ、冷ややっこにも、青い柚子と生姜のすりおろしが合うなぁ。

青い柚子、スライスして焼酎に入れても美味しいよね。あとは、焼いた鮎にはゆのすが美味しいがって、これが!

みんなあ、柚子、食べてみたくなったやろ。

うっしっし……。

さあ、暑いこの時期、さっぱりとした柚子料理、あなたも試してみませんか?

 

綺麗な柚子には棘がある

柚子農家の繁忙期は、紅葉よりも早く始まる。

柚子の実が黄色く色付き始めるのは、だいたい、10月の初め頃から。日当りの差や、樹勢の差なのだろうか。根っこは同じ一本の木なのに、実ごとに色付き具合が全く違っていて、枝の上で揺れる実は真っ青いのに、葉陰に隠れた実は、程よく色付いていたりするから不思議だ。

これは香酸柑橘類の特徴らしく、日当たりが良すぎると、実が色付くのも遅くなる。柚子の実は、スダチやカボスと同じように初めは青い。スダチやカボスも、熟すと黄色くなるのだが、意外と知らない人も多くて、去年、柚子の取材でうちに来た新聞記者さんも、「青い柚子があるんですか?これって、品種が違うんですか?」てなことを訊いてきた。
みんな、意外と柚子のことを知らんがやね。
と、言うわけで、今回は柚子の話です。

 

我が家は柚子の専業農家である。

収穫は一個ずつ手摘みで。千本ほどある全ての木から収穫し終わるのは12月半ば頃だろうか。

と、ここで断っておくが、農業は自営業である。栽培方法や栽培面積、収穫の仕方などは農家によって全く違う。これは、あくまでも、うちの場合の話なので、誤解のないようお願いしたい。

さて。 

うちの場合、収穫作業を子供たちや親戚が手伝いに来てくれる日もあるが、常時雇っている人はいない。繁忙期の2か月間、私は主人と二人、毎日仲良く、柚子の収穫をするのだな。

 「夫婦で収穫、仲がいいねー」

と、誰かに言われたら、

「だって、喧嘩したら仕事がやりにくいやろ。それに、吊り橋効果的なもんやと思うがやけど、柚子がいっぱい入ったコンテナを持ってくれたりしたら、なんか、頼もしいヤツに思えてくるがって」

と、白々しく嘯いてやろうと密かに練習しているのだが、残念なことに誰からもそんなことを言われない。たぶん、田舎で農業をする夫婦はみんな、傍目には仲良さそうに見えるのだろう。

確かに、先輩農業女子のSさんご夫婦も、とっても仲良さそうに見える。

みんな、それなりに、たまには喧嘩もするだろうし、腹の立つ日もあるはずだ。まっ、そんな話はまたの機会に。

 

ところで、皆さんは、柚子農家が栽培する柚子に、青果用と搾汁用のふた通りがあるのをご存じだろうか?

青果出荷というのは、柚子をそのまま流通に乗せる出荷方法のことだ。10個前後の柚子を化粧箱に詰め、築地や大田などあちこちの市場へと送り、競りで高値が付くのを期待するのが青果用柚子。キズが少なく綺麗な実を選別して出荷するのだが、この選別作業が結構大変だったりする。

で、選別の過程ではじかれた、キズが付いていたり、実が大き過ぎたり、小さかったりという、規格外品が、搾汁用の柚子になる。キロ単価は平均で青果用柚子の10分の1~2程と安く、うちで収穫する柚子の八割は、この、搾汁用柚子だ。何しろ、柚子は、傷がつきやすい。だから、JAに出荷したら、その日のうちに加工場で搾られて、あ~ら不思議、JA印の柚子100%ジュースに変身するのだ。まあ、びっくり。やがて、この柚子の果汁は、JA経由で大手食品メーカーにお嫁に行ったりするから、育ての親はさらにびっくり。

高知では、この柚子100%ジュースに防腐剤代わりの塩を10%ほど加えたものを、柚子酢、土佐弁で「ゆのす」と言い、だいたいどこの家庭も一升瓶入りの柚子酢をストックしている。そして年間を通して、これを料理に使うのが高知の田舎では一般的。

つまり、高知では、柚子と言えば、この「ゆのす」を指すことが多い。

そして「ゆのす」は醤油と同じ、調味料のひとつなのである。

高知の田舎では、昔から、ガラス製の醤油差しに入った「ゆのす」が食卓の隅に並んでいた。私も、焼き魚やちりめんじゃこ、焼きナスにも「ゆのす」をかけて食べるし、インスタントラーメンや、味噌汁にだってポチポチっと「ゆのす」を垂らして食べている。

そして、これが、うまいのだよ!

柚子サイコー!声を大にして叫びたいと、私はいつも思っている。

 

しかし、そんな、高知県民にとって欠かせない柚子が、他県の方にとっては、それほどでもないらしいと知った時には、正直、驚いた。

えっ?柚子の食べ方、知らんが?なんて、もったいない……。こんなに美味しいのに、これを味わえんなんて、みんな損しちゅう!

 

だいたい、他県の皆さんが柚子を買うのは、せいぜいで年に数回だろう。冬至頃に「お鍋に入れてみるのもいいかな」と、イベント的ノリで購入したものの、最後まで使いきれずに無駄にしてしまった、なんて話もたまに聞くし、柚子酢に至っては、「買ったことない」「そんなんあるの?」って感じかもしれない。

柚子農家としては、そこがちょっと、いや、かなり、残念なところだ。

確かに、最近は柚子ポン酢や、柚子風味のお菓子なども沢山出回っているし、柚子を使った料理を提供しているレストランなども昔に比べて増えてきたから、柚子を一度も食べたことがないって人は、さすがにいないかもしれない。しかし、キャベツやレタスのように年中出回っている野菜ではないし、一番安く手に入る冬至の頃でも、スーパーで三個百円くらいはするのだから、決して安くもない。柚子酢にしてもアンテナショップなどで売られてはいるのだが、全国どこでも手に入るというようなお手軽さも、お手頃さも、きっとない。
他県の方にとって、お米はないと困る食材だが、柚子は、なくても困らない食材で、使い慣れていない食材なのだな。たぶん、きっと……。

柚子は高知を代表する特産品のひとつ。その生産量は高知県がぶっちぎりで日本一。そして、その高知の中でも、私が住んでいる地域は柚子の栽培が盛んな土地だ。

なので、迷惑承知で言わせてもいらいます。

他県のみんな、高知柚子、マジサイコー、柚子を食べなきゃもったいないき!

 

……と、少々前置きが長くなった。しかも支離滅裂な感じがするが、まあ、いいか。

ぼちぼち本題に入ろう。

 

今回は、柚子の木に鋭い棘があるということを皆さんに伝えたくって、ブログを書き始めたのだが、冒頭から脱線してしまった。すみません。

ここまで読んでいただいたなら、当初の目的は70%くらい達成しているような気がするので、あと少しだけ、お付き合い願います。

この、柚子の棘は、バラの花のような可愛らしい棘とは違い、まるで、布団針のような形をしていて、長いものは5センチ強。枝や幹からまんべんなく生えていて……と、私の拙い文章で説明するより、写真を見てもらったほうがわかりやすいだろう。

ジャーン! ご覧あれ。これが、柚子の木です!
 
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写真中央の青い柚子の実は、ハウス栽培の柚子で、直径は4センチほど。この、枝から四方八方に突き出て、先っちょがちょっとオレンジ色をしたやつが件の棘である。写真の柚子の木は、棘の状態がわかりやすいように幼木を撮影したもので、実際に収穫作業をする露地柚子の成木はこちら。
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この写真のように枝が重なり合って茂っている。
先にも述べたが、青果用の柚子は傷がつきやすく、高枝鋏のような物を使用して間接的に収穫すると実に傷がつくので、一個一個手摘みが基本。だから、こんな棘だらけの茂みの奥に実った柚子は、腕を突っ込んで収穫するより他に方法がない。当然だが、素手で挑めば棘が刺さって、痛いことこの上なしだ。なので、棘が刺さらないよう、ホームセンターなどで売られている皮手袋や革製アームカバーなどを使用して収穫作業をする。しかし、中には厚い皮すら突き抜けて刺さる手強い棘もあるし、二の腕や足にも、容赦なく棘は刺さる。当然だが、痛い。棘が引っ掛かって服が破れることもしょっちゅうだし、棘が柚子の実を傷つけることもある。皮手袋だってワンシーズンも使えばボロボロ。知り合いの先輩農業女子のSさんは、脚立(三脚の六尺梯子)に登って収穫中にバランスを崩し、柚子の茂みにダイブしたことがあるそうで、二の腕にマスクメロンのような傷ができたと笑って話してくれた。
いや、笑い事やないき。
それ、大仁田厚の有刺鉄線プロレスと同じやん。
おかげで私はいつも、梯子に登って収穫作業をするときには、笑えないくらいのへっぴり腰で作業をしている。
柚子農家とは、ことほど左様に、痛くて危険な家業なのだった。
 
 
 

おんちゃん達の山遊び

f:id:kitagawayuzu:20180630151636j:plain前回に引き続き、おんちゃん達の話をもうちょっとしたいと思う。

 

私の周りのおんちゃん達は、冬場になると山遊びに興じる。

もちろん、お弁当を持って、お山でハイキング……ではない。鉄砲(猟銃のことを、おんちゃん達は、鉄砲と言います)を担ぎ、猟友会のオレンジ色のベストを着け、猟犬を引き連れて、一日中、猪や鹿を追いかけ回す「狩猟」という遊びに熱中するのだ。

狩猟解禁日には仕事なんかしていられない。早朝に集合して、みんなで山へ分け入り、猪や鹿の足跡を慎重に探し、作戦を立て、それぞれが獲物の出そうなポジションに着き、GPSと無線機能がついた首輪を嵌めた猟犬を山に放つ。そして、おんちゃん達は無線機(トランシーバー)と、タブレットスマホを片手に雑談しながら、獲物の出現を待つのである。

やがて、猪を見つけた犬が吠えはじめ、犬の首輪に付いている無線から、トランシーバーに「ワンワン!……ブヒッ!」という鳴き声が入いったら、おんちゃん達のテンションは急上昇。

「おいっ、猪がおったぞ」

「どこな?」

60歳を過ぎたおんちゃん猟師が、タブレットを使いこなしGPSで素早く場所を確認するから、ある意味凄い。

「おーい、そっちに行くぞ」

そして、連絡は、トランシーバー。

「よっしゃ、了解」

「行ったぞ、撃てぇ!」

ズドーンッ!(猟銃の発射音)

「やったか?」

「あーっ、いかーん。すまん、当たらんかった」

「おおのっ!へったくそやにゃぁ!おんしゃ、鉄砲の先が曲がっちゅうろが(笑)」

「あーっはは」

「そっちに逃げたで」

「よっしゃ、まかいちょけ」

と、スラスラ書いたが、これはあくまで、私の想像である。何しろ、私は狩猟現場に同行したことなどないから、この目で見た訳ではない。でも、まあ、おんちゃん達の話からイメージするに、だいたいこんな感じだろう。

当然、その日の終わりに、みんなで酒宴を催すのは高知県民のお約束で、獲物を仕留めたおんちゃんは、唾を散らして、今日の活躍を自慢するのだ。楽しい一日は、楽しいお酒で締めくくるのがおんちゃん達のいいところ。

高知県東部では、この遊びを「追い山」と言うのだった。

 

ここまで読んで、自然相手のアクティビティーはいいよねー、お金もかからないしー、などとのんびり思われるかも知れない。しかし、それは、大きな勘違いで、実はこの遊び、意外とお金がかかるのだ。

まず、猟銃が安くても15万円くらいはするし、銃砲所持許可申請とか講習とか色々含めると、猟銃を所持するまでに30万円近くかかる。さらに、狩猟免許や狩猟者登録にかかる狩猟税とか、毎年3~4万円くらいの更新費用が必要で、銃に取り付ける照準器(スコープ?)や装弾(銃の玉)の代金、GPS付きの猟犬用首輪など、色んな小道具の代金なども合わせると、結構な金額になる。新しい、性能の良い銃が欲しいだなんて言おうものなら、夫婦喧嘩のタネになるところだ。幸い、今のところ主人はそんなことを言わない。だって、すでに二本目の銃を買っている。これ以上欲しいだなんて、当分は言わないだろう。

それはさておき。

 

そんな山遊びが大好きなおんちゃん達。なんと、最近は、みんなで県外遠征に出掛けるようになった。遠征を始めた細かな経緯は知らないが、

「おい、知っちゅうか?瀬戸内の何とかいう島に、ざまな太っとい猪が、どっさりおる言うぞ」

「ほんまか?そりゃ、いっぺん行ってみにゃぁいかんなぁ」

とまあ、だいだいこんなとこだろう。

その瀬戸内の何とかという島で空き家を一軒、年契約で借り(家賃は電気代込みで月一万円らしい)、猟期になると、軽トラックの荷台に猟犬を乗せ、夜の高速道路を走り、朝イチのフェーリーで島に渡る。そして、二~三日、泊りがけで狩猟をして帰ってくるという追い山ツアーを、年に4~5回はやるのだから、頭がおかしいとしか言いようがない。

例えば、捕まえた猪の肉を精肉店に卸しているとか、商売にしているのなら、わからなくもない。人から頼まれて、肉を売ったりするおんちゃんも何人かはいるし、商売ならば、県外遠征もありだろう。しかし、高知のおんちゃん連中は、遊びなのだ。 あ・そ・び!

県外で狩猟をするには、その都道府県ごとに狩猟者登録をする必要がある(もちろん、登録費用がかかります)。他にも、ツアー中の猟犬の餌だとか、水だとか、布団だとか、道具だとか、用意する物を考えただけでもうんざりするのに、おんちゃん連中はそんな手間などもろともしない。

遊ぶことへの情熱。もう、この一言に尽きるのだな。

もちろん、うちの主人も、数年前からこのツアーに参加している。当然だが、遊んでいる間、仕事は私に押し付けて「ちょっと、行ってくるき」なのだ。きっと、自分だけ遊んでいるという良心の呵責に耐え切れなかったのだろう。

「島にはね、温泉もあるがって。のんびりできるえい所やき、お母さん(私のこと)も、いっぺん連れて行っちゃおか?」

なんてことを言ってくれた。

いや、主人には悪いが、そんなツアーは結構です。

お留守番で、私は満足。

 

 

 

 

 

高知のおんちゃんは、遊びが大好き

f:id:kitagawayuzu:20180627084347j:plain土佐弁で、おじさんのことを、おんちゃんと言う。

これは、親しみを込めた方言で、高知では、親戚の叔父さんのこともおんちゃんと言うし、隣に住んでる、気のいいおじさんのことも、おんちゃんと呼ぶ。関西弁で言うところの「おっちゃん」みたいなもんだ。

そんな、おんちゃん達のことを、今回は、ちょっと書いてみようと思う。

 

私の周りにいるおんちゃん連中は、おしなべて、遊ぶことが大好きである。

おんちゃんと呼ばれるのは、概ね、40歳以上。年齢層は幅広く、70歳を過ぎていようが、元気でアクティブなら、おじいちゃんではなく、おんちゃんである。

気の合う仲間なら、おんちゃん達は年齢差など関係ない。親子ほど歳が離れていても、仲のいいツレ(友達のこと)で、互いにずけずけとものを言い合う。一応、最低限のルールというか、年長者への敬意はちゃんと払うのだが、目上であろうと、冗談を交えつついじるし、いじられるほうも、容赦なく返す。お酒が入ると、たまに口論になることもあるが、翌朝には「昨夜は酔うてすまんかった」で、大抵のことは済む。

 

つまり、高知の田舎のおんちゃん連中は、やることがおおらかで、面白いのだ。

 

今の時期なら、川遊び。もちろん、いい大人だから、川でバシャバシャ水浴びをするような、お子ちゃま遊びはしない。鰻や鮎、アメゴ(ヤマメ)などを捕まえてくる川漁が、田舎のおんちゃん連中の大好きな遊びで、先日も、捕まえた鰻でバーベキューをした。

 

誰が音頭を取っているのかは知らないが、毎年今頃になると「今度の土曜日、はえ縄大会、するで」という電話が主人の携帯にもかかってくる。連絡を受けた主人は、その日から浮足立ち、土曜日の朝には仕事をほっぽらかして、「後のことは、お前に任せた」と言い残し、スキップでもしそうな足取りで出かけていくのだ。つまり、うちの主人も、遊び好きなおんちゃんの一人と言うわけだな。誘われたら、仕事なんかはそっちのけ。まあ、鰻が食べられるから許すけど、これがどこかの公務員なら、謝罪会見は避けられないだろう。

 

さて。

この「はえ縄」というのは、鰻を捕まえる仕掛けのことである。長い紐に等間隔で取り付けた針に、小魚などの餌を突き刺し、鰻が潜んでいそうな場所に沈めて翌朝引き上げる。鰻がいそうな場所を見極めるのには熟練の技が必要らしく、首尾よく鰻が掛かっている人もいれば、餌だけ取られて、まったく捕れない人もいる。それが、この遊びの面白いところで、おんちゃん達は、腕を競い合って、あーだこーだとワイワイやるのが好きなのだ。「俺の鰻が一番デカい」だとか「俺が一番多く捕まえた」なんてことを、子供みたいにはしゃいで言い合っている様子は、見ていても楽しいものがある。

そして、捕まえた鰻を肴に、みんなで一杯やろう!となるのが高知のいいところ。

おんちゃん達が、みんなで鰻をさばいて、炭火を起こし、たれに漬けて焼く。ビールを用意するのもおんちゃん達。「〇〇ちゃん(私の名前)も、鰻食べにきいやー」と、今年も電話が掛かってきたので、私も鰻バーベキューに参加した。

もうね、川で捕って来た天然鰻よ。美味しいに決まっちゅうやろ!そりゃー、ビールもすすむわね。

という訳で……、途中からワタクシ、まったく記憶がございません(汗)。

来年は、飲みすぎないよう気を付けます!

 

 

 

 

うちの主人は、人相が悪い

f:id:kitagawayuzu:20180619223932j:plainうちの主人は、人見知りな性格である。

初対面の人に対して、自分からニコニコと話しかけることはあまりなく、愛想は良くない。第一印象は「怖そうな人」がほとんどで、かく言う私でさえ、主人と知り合った当初は「この人、何か怒っちゅうがやろか?」と思ったくらいだ。

当然、主人の友人達からも「人相が悪い」とか「悪人顔」などとよく言われるし、証明写真など撮ろうものなら「指名手配犯の写真みたいや」と必ず誰かに言われている。

何しろまず、髪型がいけない。

秀でた額を隠すことなく坊主にしているのだが、威圧感がハンパない。散髪は自分で。お風呂場でバリカンを使って散髪している。ただ、髪の毛の量が少ないもんだから、手間もお金もあんまりかからない。坊主にし始めたのは20年ほど前からで、本人は「ダウンタウンのまっちゃんが、俺の髪型を真似したがで」などと言っていた。

次に、目つき。

二重瞼で目も大きいのだが、ギロギロというか、ギョロリというか、つぶらな瞳とは正反対の目つきをしている。寝不足した日などは、かすかに血走っていたりして、うっかり目が合った人の中には、「今、睨まれた?」と誤解している人も少なからずいることだろう。緊張させてごめんねと、主人の代わりに謝りたい。

そして、無精髭。

人見知りに加え、面倒くさがりな性格の主人は、マメに髭を剃ることをしない。還暦も過ぎ、さすがに白髪の割合が増えたが、頭髪に比べると、髭のほうは若かりし頃と遜色ないほどよく生えている。頭髪に、なぜこの毛髪力が現れないのか?私にはそれが不思議でならないのだが、おそらくそれは、神様が主人に与えた試練であろう。

そんなわけで、要するに、坊主で髭ヅラ。ヤクザ映画に出ている悪役商会の俳優さんみたいなルックスなのだ。人相が悪いと言われても、まあ、文句は言えまい。

 

そんな、ただでさえ人相の悪い主人なのだが、サラリーマン時代は、さらに輪をかけた仏頂面で帰ってくることがよくあった。

「お帰りー」と声をかけても、返事はない。ぶすっとした表情で、まるで何かに怒っているようなその態度は、「俺の後ろに立つな!」とか言い出しかねない気配すら漂っていた。もちろん、そんなことは一度や二度ではなかったから、「あー、また仕事でなんかあったがやな……」と、すぐに察しはつく。触らぬ神に祟りなし。そっとしておこうってな調子で、私のほうも特に何も言わなかったのだが、私が何か悪いことをしたわけでもないのに、自分が怒られているような嫌な気分になったのも事実で、そんな日は当然、ろくに会話もしなかった。

そして、怒って帰って来た日から数日後になって、ようやく、晩酌をしながら、ぽつぽつと何があったのかを話し始めるのがいつものパターン。話し終えた後は、必ずと言っていいほどため息をつく。もしかしたら、怒って帰って来た日は、口を開くと私に八つ当たりしそうだからと、無理して黙っていたのかもしれない。

 

「なあ、俺が仕事辞めて、親父の後継いで農業するって言うたら、オマエ、どうする?」

主人が、そう訊いてきたのは、いつものように晩酌をしている時だった。その頃の主人は、休日にもトラブルで呼び出されたりすることがよくあり、疲れた表情で帰ってくることが増えていた。だから私のほうも、いつか「辞めたい」と言い出すのではないかと、ある程度予想というか、覚悟をしていたから、驚くこともなかったように思う。

「どうするって、何よ?仕事辞めんとってって、私に止めて欲しいが?止めて欲しいがやったら、止めちゃうで?」

「い、いや、冗談と違うき。俺は、酔うてこんなこと言いゆう訳やないがぞ?真剣に言いゆうがぞ!」

声を荒げそうになる主人に、

「そんなん、わかっちゅうし」

私が、笑って答えると、

「わ、わかっちゅうって……」

言いかけた主人が口ごもった。

「もう、お父さん(主人)の気持ちは、決まっちゅうがやろ?そんなら、それでえいやんか。仕事、辞めたいがやろ?辞めてもかまんき」

と、多少の脚色はしているが、まあ、概ねこんな会話をしたように思う。我ながら、ちょっと良いこと言うたやん!などと、その時はちょっぴり思ったりもしたのだった。

 

そう、ここまでなら「いい話やね~」で済んだのだ。

 

しかし、この数日後、主人は私の怒りを買う羽目になる。

なぜなら主人は、私に話をするよりも先に、義父さんに、仕事を辞める相談をしていたのだ。しかも「辞めようかどうしようか悩んでいる」なんていう可愛らしいお悩み相談ではなく、「仕事を辞めて農業を継ぐ」ときっぱり断言していたのである。

それ、相談と違うやろ。辞めるっていう報告やろが!

当然、その事実を、義父さんの口から聞いた私は、腹の虫が治まらない。主人が仕事を辞めたら、一番に影響が出るのは私と子供たちである。それなのに、私を後回しにして、義父さんに辞めます宣言って、アンタ、順番が違うろがっ!

「ちょっと、私より先に義父さんに相談したって、どういうつもりなが?こういう大事なことは、まずまっ先に私に相談するがが筋というもんやろ?」

怒りにまかせて詰め寄る私に、

「い、いや、辞める言うたら怒られそうな気がして、言い出しにくかって……」

と、しどろもどろに言い訳をする主人。この時ばかりは悪人顔も迫力はない。

もうっ!腹立つわ!汁が出るまで絞っちゃろかっ!と、思ったりもしたのだが、言い出しにくかった主人の気持ちも、わからないでもない。

腹は立ったが、まあ、今回はこれぐらいにしちょいちゃろか……。

「次からはちゃんと、私に一番に言いよ」

そう言って、その場は私も怒りを収めた。

 ただし、これでも高知のハチキンである。舐めたらいかんぜよ!

「今度同じことしたら、許さんで!」

以来、主人は私のことを「社長」とか「親分」などと呼ぶようになった。

当然だが、主人の言葉からは、敬意のかけらも感じられない(笑)。

 

 

 

 

 

ぼちぼち、農業の話をしようじゃないか

f:id:kitagawayuzu:20180616173137j:plain私は現在、高知県東部の山の中で、主人と柚子を栽培している。
所謂、専業農家。お米や野菜も作っているが、専門は柚子だ。栽培面積は140アールくらい、と書いても「よーわからん」って人がほとんどだろう。柚子の木を千本ほど栽培していると説明したほうがわかりやすいかもしれない。
結婚した当時は、農業なんぞをするつもりは、まったくなかった。
主人は地元のJAに勤めていたし、私も子供たちが保育園に通い始めてからは、事務のバイトなんかをして働いていた。主人の両親が柚子農家だったので、ゆくゆくは手伝うことになるのだろうと漠然とは思っていたが、そんなのは主人が定年退職してからのことだ。老後にのんびりまったり、晴耕雨読生活するのも悪くないなどと、ぼんやり思っていた。

ところが、主人がJAを辞めてしまったのである。

主人が40歳を過ぎた頃だった。辞めた理由は、職場の人間関係や仕事のノルマ、その他もろもろで、辛い気持ちもよくわかったし、辞めたいと主人から告げられた時も、私は反対しなかった。
ただ、当時は長女が小学四年生になったばかりの頃で、次女と、末っ子長男、三人の子供たちには今からまだまだお金がかかるようになる。私はとある事業所から事務員として仕事をしないかと誘われていたので、主人が農業をするなら、私だけでも外で働いて、安定した収入を少しでも確保したほうがいいのではないかと主人に相談したのだった。

しかし、主人が首を縦に振る気配はまるでなく、
「一緒に、農業をして欲しい」
なんてことまで言い出す始末。

「えー、けど、農業は、しんどいし。収入やって、安定してないやろ?」
なるべくなら、農業は、したくない。夏は暑いし、冬は寒い。汗にまみれるし、虫にだって刺されそう。事務員の方が楽で、楽しそうに思えてしまうのだ。
すると、しぶる私を前に、ふっと真顔になった主人が
「しんどい仕事やきこそ、お前と一緒にやっていきたいがよ。しんどいきんこそ、お前に助けてもらいたいがやいか」
そう、言ったのである。
その言葉を聞いた時、まるで、二回目のプロポーズをされたような気分になった。
一人では辛い仕事も、お前とならば、乗り越えられる。さあ、一緒に手を取り合って、共に歩もう!
もちろん、そんなことまでは言わなかったが、私の心には、そう言っているように聞こえたのである。

あれから、20年……。
いや、正確には19年。

今になって、私は思う。
あの頃、私はまんまと主人に騙されたのだと。
主人の本音は、「しんどい仕事やきこそ、お前にやらせておいて、俺が楽するがよ」ではなかったかと、密かに疑う毎日である(笑)。