ちゃららのごくどう日記

土佐弁で、なまけ者とか、ぐうたらな人のことを「ごくどうもん」と言います。自由な土佐の山間から、田舎のおばちゃんが、あれこれ書いてみます。

灯台は、意外と下暗し

パソコンが、壊れた話の続きである。

話はちょっと本題からそれる。私は高知県東部の辺鄙なところで暮らしているのだが、辺鄙なところだから自然はいっぱいで、水も空気も、採れる作物もとっても美味しい。しかし、それと引き換えに、辺鄙な場所であるがゆえの不便さもそれなりにあって、東宝シネマズ高知とイオンがある高知市内までは車で片道一時間半かかるしし、一番近いユニクロまでは片道一時間。ヤマダ電機ケーズデンキまでは半時間かかるような、車がないと生活できない所で毎日暮らしている。
つまり、色んなお店のある市街地まで、物理的に遠いのだ。

そんなだから、当然、ネットで検索した最寄りのパソコン修理業者も、最寄りとは呼べないくらい遠くにあった。車で片道一時間半もかかる場所にある業者が一番近いなんて、近いという言葉の定義は何だろう?と、思わずにはいられない。パソコンを修理に出すのに、往復三時間。朝九時に出て、お昼の休憩を間に挟めば、中途半端に一日がつぶれてしまう。まっ、長い人生、そんな日もたまにはあるだろう。
そんなわけで、火曜日の夜、私は主人に「明日は仕事一日休んで、パソコン修理に持って行ってくるきね」と、仕事さぼって、ついでにウロウロ買い物もしてくる宣言をしていたのだった。
大事なデータを復旧してもらえるなら、御の字だ。遠いだのとワガママの言える立場ではない。先代のパソコンが壊れた時には、NTTさんがメーカーに送ってくれたなぁ……。修理が完了するまでに一週間以上かかったよなぁ……。てか、明日はお昼、どこで食べよっかな……。ブックオフとearthにも寄っちゃおう♡
ぼんやりと酔っぱらった頭で、そんなことを思っていた時だった。息子が
「そんな遠いとこまで行かんでも、〇〇町に修理しゆうとこあるのに」
と、ぬかすのである。
「えっ?」
〇〇町までは、家から車で片道15分……もかからない。
「そんなとこに修理店あった?」
「うん。あるで。〇〇の信号のところを右に曲がって……」

息子の話によると、そのお店は、大手パソコン機器メーカーで勤務していた人が、都会に疲れて会社を退職し、実家のある〇〇町にUターンしてきて始めたお店とかで、仕事は迅速丁寧かつ良心的だという話だった。
「へぇー。知らんかった。ネットの検索にも引っかからんかったけど……」
「そりゃ、店のおじさんが宣伝してないきやろ。でも、腕はいいって聞いたで。ほんとかどうかは知らんけど」
「ふーん」
さて。どうしたものか。明日、買い物したかったがやけどなぁ……。さぼりたがりの私は一瞬思案したのだが、そんな私の心の底を見抜いた主人がにっこり微笑んで、言った。
「〇〇町やったら、あんた、明日は半日仕事できるやろ」

……ちっ!

さて。翌日(つまり、昨日)。午後からそのお店にパソコンを持って行った。
迎えてくれたのは、眼鏡をかけ、赤いチェックの洒落たシャツを着た、小柄で痩せた、ちょっと神経質そうなおじさん(見た目年齢は私より少しだけ上)だった。
パソコンの状態と、復旧したいデータの名前と私の連絡先等を伝えると、
「うわー、このパソコン、ねじ穴とか全然見あたらないんだけど。これは、困ったな。どうやって分解しよう?ちょっと大変だな」
と、神経質そうに思えたその顔を、くしゃっとした笑顔に変えて、なんだか嬉しそうにしている。
山が高ければ高いほど燃え上がる登山家のようだなぁと思いつつ、パソコンを預けて帰って来た。

そして、本日。
息子が言った「迅速丁寧かつ良心的」は、嘘でも、噂でもなかった。今日の午後「作業終りました」と連絡があり、なんと、パソコンが無事、我が家に帰って来たのである。
たった、二日で、修理が完了するなんて、凄くない?
もちろん、会計ソフトのデータも無事!ドキュメントに保存していた文書や画像も、ダウンロードしていた楽曲も無事!修理代も二万円ちょっと。もうね、感謝しかないでしょ。
帰り際、店主のおじさんが、
「このパソコン、中のハードディスクが素晴らしいことに日立製やったき、壊れてなくって……」
と、熱弁をふるってくれたのだが、機械オンチの私には、日立製のハードディスクがどう素晴らしいのかはさっぱりわからなかった。しかし、店主のおじさんの笑顔は本当に素敵で、パソコンよりも、もっと大事なものを直してもらったような気がしている。

そんなこんなで、帰宅後、息子が買ったまま使っていないUSBメモリーを勝手に取り上げて、復旧した会計ソフトを早速ダウンロードしたのは、ここだけの秘密で、私は今、パソコンでこのブログを書いている。
あー、皆様に感謝。